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〜おさむクリニック新聞から〜
  
3. 死は一度だけ
(おさむクリニック新聞1999年 3月号より)

  さて、私事になりますが、この4月(1999年)で当クリニックは開院して、まる5年を迎えます。一つの区切りと考えて当院にカルテのある方で、お亡くなりになった方の数を調べてみました。その結果、すでに60人近くの方がお亡くなりになっており、その数が思いのほか多い事に驚くとともに、5年間という時間の重さを感じました。
この患者様の中には、当院から紹介した先の病院でお亡くなりになった方もありますし、中には突発的な病気でお亡くなりになり、後でご不幸を知った方もあります。
私は、開院当時から在宅医療に力を入れてゆこうと考えていましたが、訪問看護や訪問診療といった在宅医療の結果、ご自宅で最期を看取らせていただいた方が20人ありました。この数字が多いか少ないかは別にして、この方々の記憶は今でもきわめて鮮明であり、それぞれの方から多くの事を教えていただきました。特に、病院での最期しか知らなかった私や看護婦にとって、住み慣れた自宅での家族に囲まれた尊厳ある最期を経験させていただいた事は、新鮮であったとともに、『ああこれが人間として本来の最期なのだ』という気持ちを強く持ちました。

職業柄多くの死に直面してきました。その数は100や200ではありません。しかし、開業するまでは、そのすべてが病院での経験であり、皆様の中にも経験のある方もおられると思いますが、鼻から胃に栄養のチューブ、尿のチューブ、何本もの点滴に心電図のモニター、場合によっては人工呼吸器がついた状態の事が多く最後には心マッサージ、そして
「家族の方は外に出ておいて下さい」……。そこにあるのは、できる限りの手を尽くした末の生物としての死ではあっても、尊厳のある人間の死としては充分なものでは無かったように思います。家族には最高の医療を受けた結果なのだからと自分に言い聞かせる事で、よい最期だったと納得することが出来たかもしれませんが、はたして主人公であるべき患者様自身はどんな気持ちで最期を迎えられていたのでしょう。勤務医時代にはあまり感じる事の無かったこんな疑問を、在宅での最期を経験させていただくに従い、強く感じるようになってきました。

色々な病気があり、様々な状況がありますので、病院での死を否定するつもりもありませんし、在宅での最期であれば何でも良いとも思いません。しかし、もしあなたが、本当は家で最期を迎えたかったのに、入院したまま最期を迎えなければならない状況になったとしたらいかがでしょう。

人間この世に生を受けた限り必ず死を迎えます。誕生に関しては選択の余地はありませんが、死に関しては自分で色々な選択が可能です。それは、病気の告知の有無を始め、最期を迎える場所や延命治療について、そして脳死移植に賛同するか否かまで様々です。
こういったことは、きわめて大切な事ですから、自分で普段から周囲に意思表示をして、自ら自分の希望する方向をはっきりとさせておく事が大切だと思います。
一生に一度の最期。自ら納得できる最期を自ら演出しようではありませんか。


〜おさむクリニック新聞から〜

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