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〜おさむクリニック新聞から〜 |
2. 賢い医者のかかり方 | |||
(おさむクリニック新聞1998年7月号より) | |||
最近ある医学関係の雑誌にちょっと気になる話が出ていました。それはこんな話でした。ある初老の男性が体調をくずして近くの開業医を受診しました。その医師はすぐに異常をみつけて大病院にその方を紹介しました。大病院では説明のないまま検査が続きました。患者さん本人や娘さんが担当医に説明を求めても「まだ、検査中だから」の一点張りだったそうです。そして診断の結果は癌、しかも進行しており治療はできない状態でした。この説明を受けた患者さんは、わらにもすがる思いで入院を希望しましたが、予約でいっぱいのため暫く自宅で待機することになりました。 しかし、なかなか入院許可の連絡は無く、耐えられない痛みも出てきました。痛みが強いので早く入院させてほしい旨を電話しても、順番はまだ先なのでもう少し待ってほしいとの返事でした。しびれを切らした患者さんと家族は近くの小さな病院に入院をお願いし、その願いはすぐにかなえられました。病院のベッドでこの男性は「初めて人間らしい医療を受けることができた」と涙され、その数週間後に亡くなられたそうです……。皆さんはどんな感想をもたれましたか? さて、この話には色々な問題点が含まれています。まず開業医の先生についてですが、大病院に紹介しっぱなしではなく、検査の状況や病状の変化について紹介先の先生や家族ともっと密に連絡を取るべきだったのではないでしょうか。そうすれば手のほどこしようが無いとわかった時点で、病状に合った適切な病院をもっと早く紹介できたでしょうし、場合によっては自宅で最期を迎えることも可能だったかもしれません。 病院の医師も、検査の進行具合や病状についてその都度患者さんや家族に説明するのはもちろんのこと、紹介元の開業医の先生にも逐次報告すべきだったと思います。また、最終的に進行癌とわかり、自分の勤務する病院が急性期の病院であり、末期医療が専門でないのであれば、患者や家族にその旨を説明してよりふさわしい病院を紹介するか、その相談を最初の開業医に委ねるといった配慮が必要だったように思います。 このように、医療機関同士が横の連絡を密にとっていなかったことが、不幸の一因であったことは間違いのない事実ですが、患者さんや家族にも問題がなかったわけではないと私は思います。その一つはすべてを開業医に相談しなかったこと、もう一つは病院の役割分担についてよく理解できていなかったことでしょう。診断がはっきりついたところで開業医の先生に相談しておられれば、よりふさわしい病院を早く紹介してもらえた可能性が高いと思われます。また、大病院は手のほどこしようの無い患者さんよりも、頑張れば何とか助かる可能性のある患者さんを当然優先します。したがって癌だからといって大病院に入院を依頼するのは必ずしも正しくない場合もあるのです。この患者さんが癌で命を落としたことは致し方ない事なのかもしれません。しかし、医療機関を上手に利用することでもう少し納得の行く、心残りのない最期を迎えることができたのではないかと思えて仕方がありません。 さて、医療機関を上手く利用するためには、医療機関それぞれの役割分担を知っておく必要があります。まず、開業医はいわゆる皆様のかかりつけ医としての機能を持っており、風邪などの軽い急性疾患はもちろんのこと、糖尿病や高血圧、高脂血症や喘息といった慢性疾患まで幅広くカバーしています。対照的に大学病院などの規模の大きな病院は、開業医や中小の病院では手におえない様々な病気の診断や特殊な治療を行うことが主な役割であり、風邪などのポピュラーな病気でかかったり、安定している慢性疾患の治療を受けたりするところではありません。中小の病院はそれぞれが特色を持っており、胃腸外科、脳神経外科、整形外科といった専門科目を特色としている病院や、慢性疾患の長期入院を主に扱う病院、癌末期の方のケアに情熱を傾けている病院など様々です。 それでは、こういった様々な医療機関をどのように選択すれば良いのでしょうか。世は情報化時代ですが、医療に関しては色々と制約が多く、皆様が正確な医療機関の情報を手に入れることは大変困難なことのように思われます。我々にさえ解りづらい面が多くありますが、少なくとも一般の方々よりは情報を入手しやすい立場にありますので、まずは信頼できる、かかりつけ医を持ち、その医者に紹介役やキーステーションの役目をしてもらうこと、それがもっとも賢い医療の受け方ではないかと思います。 私のかかりつけ医はあなたですよといわれれば医者も悪い気はしませんから、親身になって色々と相談に乗ってくれたり紹介状を書いてくれたりするはずです。基本健康審査などもかかりつけ医で受けておくと、データはそこに蓄積され、結果的に皆様の健康維持や病気の早期発見に役立つのです。かかりつけ医を決めずにむやみにあちこちの医療機関を受診すると、自分の健康情報を分散させてしまうことになりますし、医者の立場としても責任が曖昧になり、なんとなく遠慮がちになりますのでけっして得策とは思えません。 この話を読んで、窓口となる、かかりつけ医を決めてどんな細かい事でも相談することは、健康維持のみならず、納得のできる最期を迎える場面でも大変意味があることだと感じました。みなさんはいかがお考えでしょうか。 |
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